こんにちは、ジメツです。
「商標権の価値はなんでしょうか?」と質問すると、ほとんど方が「商標を独占できること」と答えます。
でも「商標権の価値」って独り占めできることだけではありません。
商標権の価値とは信用の力、信用の力とはイメージの力、そして本当のイメージの力とは商標を使用する者の日々の努力によってしか育てることができません。
この記事を読めば、法的効果の奥にある商標権の真の価値を理解することができます。
是非、最後までお読みくださいね。
商標登録直後の商標権の価値
法律上、同一または類似の商標は商標登録できません(商標法第4条1項11号、8条1項、2項)。
たとえば、土地の場合には境界が引かれ、重複した範囲を取得することはできません。
とすると、商標登録は、商標という国の土地を手に入れる手段にすぎません。
そして、商標登録の直後では、商標権の価値は『ほぼゼロ』です。
価値無しとまでは言いませんが・・・土地の値段すなわち商標登録に掛かった費用分くらいの価値しかないです。
商標権の価値=信用=イメージ
なぜはじめは価値が無いのか?
多くの場合、商標登録出願する商標はこれから使おうとしている商標です。
商標権を獲得してからその商標を使い始めることが多いです。
つまり、商標が付いた商品・サービスの提供が始まったとしても、消費者や取引先などはその商標を知らないのです。
あなたは自分が知らない商品やサービスが目の前にあって、積極的に買おうとしますか?
なかなか手を出しにくいのではないでしょうか。
なぜなら、商標に『信用』が無いからです。
どうしたら信用される?
消費者・事業者に感謝しつつ、愚直に、誠実に、商標を付した商品・サービスを提供し続けます。
こんなに怪しい(?)商品・サービスを初見で買ってくださる方がいるなんて、とてもありがたいことです。
商品やサービスに一定の商標を使用し続けると、商品やサービスに対する『安心』と『安全』が需要者・消費者に形成されていき、商標に『業務上の信用』が蓄積されていきます。
商標に蓄積される信用が『一定値』を超えると、信用が財産的価値を持つようになります。
つまり、需要者・消費者が商標を見たり聞いたりしたとき、商標が付いた商品・サービスなら安心して購入できる、という『信用』こそが商標権の価値(ブランド)です。
信用度の違いは価格の違い?
同じ商品やサービスでも、商標の違いによって価格が異なることがあります。
この価格の違いの理由の一つが商標権の価値の違いであり、需要者・消費者の商標に対する信用度の違いなのです。
たとえば、T社の大衆車は500万円だとして、これを1,000万円で売るには消費者に「1,000万円で買っても良い」と思わせるような信用が足りません。
F社の高級車は3,000万円。でも売れます。買えない人にも買いたい、乗りたいと思わせるほどです。
値段が高くても売れるのは、商標が需要者・消費者に信用されているからです。
しかし、信用は目に見えません。
商標を使用する方がやるべきことは、この目に見えない信用をコントロールすることです。
どうやって信用をコントロールする?
商品・サービスを信用できるかどうかは、商品・サービスのイメージで決まります。
まだ買ったこともない商品だけどなんか良さそう、いや、絶対欲しい!
受けたことがないサービスだけどなんか良さそう、いや、絶対受けたい!
このようなイメージをコントロールするのです。
もちろん、商品やサービスに対するイメージはポジティブでなければいけません。
信用(イメージ)をコツコツ育てよう
登録料を納付したらすぐに使い始めよう
商標に対する信用度は、商標が使用されているかどうかで変化します。
ですから、「商標登録」という種を蒔いたあとは、「登録商標を使う」という水やりをすることです。
やがて芽が出て花開く時が来ます。
商品であれば、商品そのものや商品の包装に商標を付けます。
サービスであれば、サービスを提供するための施設や物などに商標を付けます。
ウェブサイトにも使います。広告にも使います。
放置していては、誰の目にも止まりません。花も枯れてしまうでしょう。
商標に蓄積される信用が『一定値』を超えるまで、積極的に登録商標を使っていきます。
いつかは信用が『一定値』を超える時が来る
商標を使うということは、時間と費用と労力が掛かります。
商標に蓄積される信用が財産的価値を持つための『一定値』がどんな値であるかもわかりません。
いつまで使い続ければいいのだろう?
しかし、努力次第で登録商標の認知度が向上し、目に見えない信用が商標に蓄積されていきます。
それがやがて『一定値』を超え、「信用が財産的価値を持つ」という花を咲かせることになります。
信用(イメージ)の果実を収穫しよう
信用は売り上げを変化させる
商標に蓄積した信用は、商品やサービスを「売り上げ」に変える力になります。
売り上げは経営の土台です。
ビジネスの収益基盤を安定させ、事業拡大にも寄与する力です。
さらなる利益
利益は、商品やサービスの売り上げだけではありません。
商標を使いたいという第三者が現れ、ライセンス契約によって商標の使用を許諾すれば、ライセンス収入を得ることもできます。
あるいは、商標権そのものを売却することで売却益を得ることもできます。
特許庁のお墨付きであるという事実
商標登録自体が信用を生むこともあります。
商標登録によって経営姿勢や信用力が評価されることによって、事業のための資金や融資の獲得の可能性が高まります。
新規事業の立ち上げ時には商標登録は大きな武器になります。
信用はコピーされない
商標登録後、良い商品や良いサービスを提供していたとしても、技術、デザイン、販促方法などはいつかは陳腐化します。
しかし、登録商標、及び、積み上げた信用は、誰にもコピーできません。
商標権の強みはそこになるのです。
そして、商標権で守られたビジネスを展開することにより、需要者・消費者の暮らしをより豊かにすることができます。
これこそが、商標権者の願いではないでしょうか。
商標を使い続けた結果の一例
特許庁から発行されている『事例から学ぶ商標活用ガイド(2019年)』に掲載されている例をご紹介します。
商標の使用といっても同じやり方はほとんどなく、全て個別の事例であり、試行錯誤しながら手探りしながら努力を続けた結果です。
このような事例こそ、独占使用という法的効果の奥にある商標権の真の価値です。
気になる信用の値段
知的財産の世界では、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチの3つの価値評価方法が知られています。
原価法(コスト・アプローチ)
原価法は、技術などを入手・開発するために要するコストをベースに評価額を設定する方法です。
過去にいくらのコストを要したかという、コストをベースとして評価する方法を、歴史原価法(ヒストリカルコスト・アプローチ)といいます。
現時点で技術などを入手・開発するとした場合に、どれだけのコストを要するかという観点から金額を算定する方法は、置き換え原価法(リプレイスメントコスト・アプローチ)といいます。
歴史原価法では、当該資産を取得もしくは創り出すために、「これまでに」どれだけの費用を要したかという観点で評価しますので、この価値は資産の持つ消極的な価値です。
取引事例比較法(マーケット・アプローチ)
取引事例比較法は、資産が現に取引されている類似事例を参照し、そこで設定された取引価格をベースに評価する方法です。
取引事例における取引価額は、現時点で実際に取引されている価額であるため、非常に信頼性を持つ評価額と言えます。
ただし、ほとんどの場合、技術等の取引に関する情報が当事者間の秘密事項として外部に流出しませんので、参考となる事例がほとんどありません。
収益還元法(インカム・アプローチ)
収益還元法は、資産が事業活動などに用いられることによって生み出される収益(インカム)の規模をベースに評価する方法です。
インカムの例としては、税引き後純利益額、売上高、営業利益額などがあります。
通常の評価実務では、キャッシュフローを具体的なインカムとして用いるケースが多く存在するようです。
評価方法の国際標準とされているのはインカム・アプローチです。
・商標登録直後の商標権の価値はほぼ無い。
・商標権の価値は、信用されることであり、需要者に良いイメージを持たせることである。
・商標を使い続けることで信用が蓄積されていく。
・信用(イメージ)は売り上げを変化させ、さらなる利益を生み出す。
・商標権の価値評価の方法は3つある。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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