出願前の商標は常に誰かに狙われています。
そんなバカな!と思いたいところですが、世の中は厳しい情報戦。
新しいネーミングやマークをついつい誰かに見せたりしていませんか?
そんなことしたら・・・あぁ、どうなってしまうのでしょう。
この記事を読めば、出願前の行動によって出願人が不利になる状況がわかります。
詳しく説明していきますね。
【やってしまう・その1】誰かに教えてしまう
人は意外と誰かに見せたり喋ったりしてしまうものです。
今考えている商品のマーク、どう思う?
サービスの新名称は○○です。利用してくださいね。
来月、お店を開くんです。お店の名前は○○っていいます。
商標を見聞きした人たちが全て良い人たちばかりとは限りません。
仮に商標の出願を済ませていない状況だったとします。
この状況で、誰かに商標を教えてしまった場合、どんなことが起こり得るでしょうか。
商標を見聞きした人が、先回りして出願してしまう
商標をパクって真の商標保持者や別の人に商標権を売りつけて儲けたい、と考える人がいます。
あるいは、商標使用者に損害を与えたい、と考える人がいます。
先回りして出願されてしまったら、真の商標保持者の商標登録が難しくなるだけでなく、商標の使用自体も難しくなります。
別の商標に変更せざるを得ないとなると、看板、チラシ、名刺など、商標を付したあらゆるものを全て交換しなくてはなりません。
商標を見聞きした人が、先に使い始めてしまう
商標を自分のものにしたい、と考えて先に使い始めてしまう人がいるかもしれません。
あるいは、先に商標を使ってしまうことで、「商標は使った人のもの」という既成事実を作ってしまおうと考える人がいるかもしれません。
他人の商標を自分のものにしてしまおう、という考えです。

しかも、真の商標保持者が商標を使うと後出しになってしまいます。
ライバルが先に商標を使ってしまうことで、真の商標保持者に商標を使わせないようにしてしまうのです。
ライバルの目論みとして、先に商標を使って広めてしまい、誰もがその呼び名を使うことで商標の普通名称化を狙う、ということもあります。
商標が普通名称化してしまうと、法律上、誰も商標登録できません。

高度な嫌がらせです
しかし、誰かに使われている商標が商標登録できない、というわけではありません。
誰かが商標登録を済ませてしまうことで、真の商標保持者がその商標を使えなくなってしまうことが困るのです。
商標を見聞きした人が、誰かに教えてしまう
おしゃべりな方が広めてくれれば、広告宣伝効果がありそうです。
それが善意の伝聞であれば良いのですが・・・。
中には、ライバル企業など、真の商標保持者の商品やサービスを良く思っていない人がいます。
あるいは、商標の情報を欲しがっている人もいます。



商標の情報を欲しがっている人なんているの?
商標の情報を欲しがっている人は、真の商標保持者をどうやって出し抜こうか、常に考えています。
守秘義務のない人は全て敵です。家族にも慎重に話しましょう。
ライバルが、先に特許庁に出願してしまう
ライバルが先に商標登録出願してしまっては、真の商標保持者の商標登録の見込みはありません。
ライバルは、自分がその商標を使うためではなく、真の商標保持者に商標登録させないために動きます。


その行動は想像できないかもしれませんが、めちゃくちゃ早いと思ってください。
真の商標保持者の商標が知られた次の日にはもう、ライバルは商標登録出願を終えている、という早さです。
ライバルに先を越されたら、商標登録の可能性はゼロです。
商標を誰かに教える前に、商標を開示する相手が守秘義務を負っているかどうかを常に意識しましょう。
【やってしまう・その2】願書作成で自滅する
現在、様々な情報がインターネットで手に入ります。
特許庁からも、商標の出願願書に関する情報が公開されています。
とはいえ、商標登録は行政庁に対する手続きです。
多くの専門性を含んでおり、初めて出願申請する方には難しい点が多いと思います。
実際、どんなところで自滅してしまうのでしょうか。
出願書類の書き方が難しい
出願書類は、決められた様式で書かなければなりません。
出願書類は、出願後すぐに審査官に審査されず、まずは方式審査官による方式審査に回されます。


例えば、書式について以下のようなことが審査されます。
出願書類や手数料の納付に不備があると、「手続補正指令書」が送られてきます。
手続補正指令書を提出しないと、出願が無かったことなり、出願料も戻ってきません。
商標調査が難しい
方式審査を通過できたとしても、審査で拒絶されたり、登録できなかったりしては、出願が無駄になってしまいます。
出願を無駄にしないために、出願前に商標調査を行うことは業界では必須です。



すでに登録されている同じ商標を発見できたとしても、似ている似ていないの判断は難しいです。
商標が似ているか似ていないかという判断は、裁判でも争われるくらいです。
商標調査においては、他人の商標と紛らわしいかどうかの他に、以下の項目も判断が必要です。
適切な権利範囲の設定が難しい
出願書類では、【指定商品(指定役務)】の欄に、商標を使う商品やサービスを記載します。
未来の事業内容等、何を権利範囲に含めるかも重要です。
指定商品・指定役務の範囲が、商標権の実質的な権利範囲です。



指定商品・指定役務を決めることは弁理士でも難しいです。
【指定商品(指定役務)】の欄は審査官が見るポイントの一つです。
例えば、サービスとして「自動車の修理」と記載した場合、「おもちゃの自動車の修理」は権利範囲に含まれません。
【指定商品(指定役務)】の欄が明確に記載されていないと、出願が拒絶されてします。


弁理士でも、指定商品や指定役務の記載が難しいと感じる場合があります。
個人で商標登録出願しようとしているならば、指定商品・指定役務の記載は避けては通れない難所の一つになります。



特許庁のサイトだけではわからないところは、『自滅の商標登録』を参考にしてくださいね。


もちろん、費用対効果で弁理士に依頼しても良いと思います。
【やってしまう・その3】忙しすぎて出願が後回し
弁理士は口酸っぱく言います。
「出願は早くしましょう」と。
なぜでしょうか?
日本は『一日でも早く出願した者勝ち』の制度を採用している
商標を誰よりも早く使い始めることは、商標登録をする上で必須ではありません。
しかし、日本では、法律上、一番早く出願した人に権利を与えるという先願主義を採用しています。
つまり、商標登録は早い者勝ちです。
このような法律である以上、誰よりも早く商標登録出願しなければなりません。
2番じゃダメなんです。


商標の新しさは商標登録の要件ではない
特許、実用新案、意匠は、世の中に知られていない(新しいものである)ことが権利を取得するための要件の一つです。
しかし、商標では、新しいネーミングや新しいマークであることは権利を取得するための要件ではありません。
登録されていた商標の商標権が消滅した後は、誰かがその商標を出願して商標登録することができます。



商標は、商品やサービスの「目印」ですので、斬新なものや凝ったものでなくても良いです。
既に知られた名称や、馴染みの名称が、商標登録されることもあります。
斬新なネーミングやマーク、凝ったものを考案することは大事ですが、熟考している間に商標登録出願が遅れてしまうことに気をつけたいところです。
みんな似たようなことを考える
同業者が同じような商品やサービスを展開するときがあります。それぞれ別々に商標を考えているのに、不思議なことに、なぜかみんな似たような商標を考えます。
同日に複数の商標登録出願があった場合、出願人同士で協議をして、商標登録できる人を一人決めます。
協議が決裂した場合、どうなると思いますか?
特許庁で「くじ」を引きます。ガラガラですね!
当選を引いた者のみが勝者です。他の者は商標登録できません。
ですので、1日も早く商標登録出願を済ませることは、自分の商標を守ることに繋がります。
・誰かに商標を教えてしまうと、先回りされて出願や使用を許してしまう可能性がある。
・願書の作成は専門性を多く含んでおり、難しい点が非常に多い。自滅しそうになったら『自滅の商標登録』を参考にしてね。
・商標登録は1日でも早く出願申請した者の勝ち。忙しいからと出願を後回しにすると、くじ引きで負けて商標登録が絶望的となることもあり得る。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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